コンテンツにジャンプ メニューにジャンプ
公益財団法人三島海雲記念財団
学術研究 Communication Blog

ホーム> 学術研究 Communication Blog> 腸内環境の観点から近未来型の健康社会の実現を 目指す!!

三島海雲学術賞フォローアップインタビュー

これまでの三島海雲学術賞受賞者の方に、ご専門分野や受賞研究、最近のトピックスなどをお聞きするシリーズです。今回は2016年度自然科学部門で受賞された國澤純先生です。

腸内環境の観点から近未来型の健康社会の実現を 目指す!!
國澤 純
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
ワクチン・アジュバント研究センター
センター長

健康未来を決定する腸内環境

最近、健康における腸の働きが注目されています。腸は消化管として食物を消化し吸収することが主な仕事ですが、同時に多くの免疫細胞を持つ体内最大の免疫臓器でもあります。

腸の免疫バランスは、感染症やアレルギー、炎症性疾患などに関わっていると言われていますが、最近では、糖尿病などの生活習慣病やガンなどにも関与していると言われています。私は、腸の免疫が健康状態に及ぼす様々な影響について、食品成分や腸内細菌の働きに着目した研究を行い、さらに、得られた知見を活用することで健康社会の実現を目指しています。

img01_03.jpg

 

必須栄養素が有する免疫制御機能に関する研究で受賞

食品成分のうち、私たちが作り出すことが出来ない必須栄養素は、健康に与える影響が大きいと予想されます。実際に、必須栄養素の一つであるビタミンは、免疫機能を始め、多くの生体機能に必要です。

私はビタミンの免疫機能に着目した研究から、全ての免疫機能に全てのビタミンが必要なのではなく、特定のビタミンが特定の免疫機能を制御していることを、ビタミンAやB1、B6、B9を例に証明しました。

また食用油を構成する脂肪酸の組成に着目した研究から、脂肪酸が腸管で吸収された後の体内動態と代謝を解析し、生体防御やアレルギー、炎症などを制御する代謝物を同定し、その作用メカニズムを解明しました。

 

ヒトデータ解析と基礎研究を組み合わせたスパイラル型研究への発展

現在は、食品成分だけではなく、発酵食品に含まれる微生物や腸内細菌にも着目して研究を進めています。特に、微生物が食品成分を原料に作り出す代謝物である「ポストバイオティクス」に注目し、例えば納豆菌の機能を用いて抗アレルギー物質を作り出す研究を行っています。

さらに、人の腸内細菌や食生活には個人差があることから、人の健康状態と腸内環境の関係を調査する拠点を5年ほど前から日本各地に立ち上げました。そこでは、様々な分析手法で得られたビッグデータをバイオインフォマティクス解析し、健康に関わる因子を抽出して仮説を立て、動物モデルを用いて仮説の検証とメカニズム解明を行い、ヒトの研究にフィードバックする「スパイラル型研究」を展開しています。

現在は、得られた情報を参加者にフィードバックして行動変容を促す新しい健康システムの開発や、不足している栄養素を補う製品の開発など、社会実装にも取り組んでいます。新型コロナの影響で、ヒトの研究をおこなうことが困難になりましたが、周囲の方のご理解とご協力により、大きな縮小もなく研究を継続でき、現在では5千名以上のデータが集まり、健康に良い影響を与える様々な要因が見つかってきているところです。

 

今後の豊富

受賞当時は基礎研究が中心でしたが、現在はヒトを対象にした研究や社会システムの構築、製品の開発など多方面に研究が広がり、それぞれが協調的に連携した体制が構築できてきました。

コロナ禍で健康への意識が高まっている中、「免疫」や「腸内環境」に関する学術情報を発信し、社会実装を進めることで、腸から健康につながる社会を実現したいと考えています。

2021年9月15日

國澤 純

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
ワクチン・アジュバント研究センター
センター長

1996 年 大阪大学薬学部 卒業 
2001年 大阪大学大学院薬学研究科 博士課程修了
2004年 東京大学医科学研究所助手
2013年 独立行政法人医薬基盤研究所
(2015年より現研究所に改組) プロジェクトリーダー
2019年より現職