コンテンツにジャンプ メニューにジャンプ
公益財団法人三島海雲記念財団
学術研究 Communication Blog

ホーム> 学術研究 Communication Blog> 高麗・朝鮮王朝の古文書研究から朝鮮半島の歴史を捉えなおす

三島海雲学術賞フォローアップインタビュー

これまでの三島海雲学術賞受賞者の方に、ご専門分野や受賞研究、最近のトピックスなどをお聞きするシリーズです。今回は2015年度人文科学部門で受賞された川西裕也先生です。

高麗・朝鮮王朝の古文書研究から朝鮮半島の歴史を捉えなおす川西裕也・新潟大学大学院現代社会文化研究科 助教

高麗・朝鮮王朝の古文書様式や機能・伝来過程を解明

朝鮮半島に興った高麗(10~14世紀)・朝鮮王朝(14~19世紀)の古文書を専門として研究しています。古文書の大部分は、作成当時の人々によって直接書き記されたものであり、歴史学の基礎となる重要な一次史料と言えます。

ただ、高麗・朝鮮王朝の古文書に関しては必ずしも研究が盛んとはいえず、解決すべき課題が数多く残されています。そこで、古文書の様式や機能・伝来過程という基本的な問題の解明に向けて、これまで研究を進めて来ました。

古文書というミクロな視点から、朝鮮半島の歴史を捉え直すことを目標としています。

img01_03.jpg

 

受賞著書『朝鮮中近世の公文書と国家』が韓国でも翻訳され刊行

現存する高麗・朝鮮王朝の古文書の中、多数を占めているのは官僚の任命文書です。高麗末期から朝鮮初期(14~15世紀)にかけて、任命文書の様式は変更を繰り返した末、15世紀末期に「官教」(教旨)と「奉教告身」(教牒)という二種の様式に固定されることになりました。

この頻繁な様式の変化には、国王と官僚による人事任命権の争いや、同時代の中国王朝である元や明の存在が大きく影響していたことが指摘できます。

本研究の成果である『朝鮮中近世の公文書と国家』により三島海雲学術賞を受賞させていただきました。本書は、朴成鎬先生(韓国学中央研究院)のご尽力により、2020年8月、韓国で翻訳刊行されています(『고려 말 조선 초 공문서와 국가』한국학중앙연구원출판부)。

 

コロナ禍により国内外の学会や研究会にオンラインで参加

新型コロナウイルスの感染拡大により、韓国はもとより日本国内でも資料調査が大幅に制限されてしまったことは大変な痛手でした。

ただ、幸い韓国では史料のデジタル化作業が盛んに行われており、図書館や研究機関のウェブサイト上に大量の史料データが掲載されています。現在、これらの史料データを最大限活用して研究を進めている最中です。

また最近ではオンラインで学会や研究会が行われており、これまでなかなか行くことが難しかった国内外の学会や研究会に気軽に参加できるようになりました。

学会・研究会のオンライン化は、移動に多大な時間と費用がかかっていた従来の対面式に比べて利便性が非常に高く、コロナ禍が学界にもたらした唯一の利点と言えるかもしれません。

 

日本で所蔵されている世界的にも貴重な朝鮮古文書の調査分析を進める

引きつづき高麗・朝鮮王朝の古文書の特質を明らかにすることに加え、日本に残る朝鮮の古文書についても調査を進めていきたいと考えています。

日本各地の図書館や博物館、美術館、寺社等には、朝鮮の王族や官僚が大名に送った書簡や、使者として派遣されて来た僧侶がしたためた墨跡など、興味深い古文書が多数所蔵されています。

これらの古文書は、韓国に現在残る古文書の中にも類例を見出すことのできない、大変貴重なものばかりです。日本所在の朝鮮古文書を積極的に調査・分析することは、この地で活動する朝鮮古文書学研究者の役割のひとつと考えています。

2021年6月1日

川西裕也(新潟大学大学院現代社会文化研究科助教)

2011年 九州大学大学院人文科学府博士後期課程単位取得退学 
2011年 日本学術振興会特別研究員PD
2012年 九州大学より博士学位(文学)取得
2014年 東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門 特任研究員
2015年-現在 新潟大学大学院 現代社会文化研究科 助教、現在に至る